図:J Pediatr Gastroenterol Nutr 07 March 2024 Graphical Abstractを改変
ナッツ類は、不飽和脂肪酸やタンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含む栄養価の高い食品です。今回、子供の出生前からの研究を行う「九州・沖縄母子保健研究」で、妊娠中のナッツの摂取と、出生時の5歳時点のさまざまな行動問題のリスクとの関連が調査されました。
研究では、1199組の母子を対象とし、妊娠中の母親に食事内容に関するアンケート調査を行い、摂取した食品の内容を把握しました。
その後、生まれた子供には、情緒的問題や行動の問題、多動性、ピアトラブル(仲間に関する問題)、社会的行動などに関して、「Strengths and Difficulties Questionnaire(強みと困難に関するアンケート)」を用いて調べました。
また、食事アンケートの回答以外の要素が結果に影響を与えることを考慮して、それ以外の要因に関しては、結果に影響しないようデータの調整が行われました。
結果として、妊娠中にナッツ類を食べていなかった母親に比べて、ナッツ類を食べていた母親の子は、5歳時点でのピアトラブルのリスクが明らかに少ないことが分かりました。
ピアトラブル以外の項目以外では、ナッツの摂取との明らかな関連性は見られなかったとのことです。
コメント
これまでも、妊娠中のナッツの摂取と出生時の神経心理学的発達の関係については、以下の報告がなされていました。
2000組以上の母子を対象としたスペインの研究で、妊娠初期の母親のナッツ摂取量が多いほど、1歳半、5歳、8歳の子どもの神経心理学的発達が促進されることが明らかにされたというものです。
「九州・沖縄母子保健研究」では過去に、ナッツの主要栄養素である、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、葉酸、ビタミンB6、カルシウム、マグネシウムの摂取と出生時の5歳時点での仲間関係構築トラブルのリスクについて調査しており、その研究ではそれらの栄養素と仲間関係構築トラブルとの関連は確認されませんでした。
このことは、特定の栄養素ではなく、ナッツに含まれている栄養素全体の相互作用による影響が関係しているのかもしれません。
なお、この研究でのナッツの平均摂取量は0.6g/日であり、調査時の日本人女性(30-39歳)の平均摂取量(1.5g/日)の半分以下だったということです。