亜鉛は人体に2番目に多く存在する微量元素で、男性生殖機能においても重要な役割を担っています。
亜鉛不足は、精子の形成や精子の質に悪影響を及ぼし、男性ホルモンの代表であるテストステロンの濃度にもマイナスの影響を及ぼすことが知られています。
今回、日本の中部地方の不妊治療クリニックでは、2010名の不妊症の男性を対象として、血液中の亜鉛濃度と精子の質の関連について、大規模な調査が行われました。
調査は2018年11月から2021年5月までにクリニックを受診した男性に対して行われ、血液中の亜鉛濃度を測定し、年齢、BMI、精子濃度、精子運動率と、ホルモンの状態との関連を調べました。
参加者のうち、血液中の亜鉛濃度が正常の男性は全体の53.2%で、潜在性亜鉛欠乏症(正常値と欠乏の間)は42.0%、亜鉛欠乏症は3.9%でした。一方で、亜鉛濃度が正常値を超えていた男性は0.9%のみでした。
また参加者のうち、精液検査が正常な男性は、無精子症の男性や不定型無精子症(精液に含まれる精子の数が1mlあたり100,000個未満の、精子が非常に少ないタイプ)の男性に比べて血液中の亜鉛濃度が明らかに高いことが分かりました。
コメント
今回行われた亜鉛と精子に関する調査は、生殖年齢における亜鉛濃度の調査として国内最大のものでした。
調査により、亜鉛濃度は、年齢やBMI、ホルモンの状態との関連は確認されませんでしたが、40%以上の男性で亜鉛が欠乏しており、さらに亜鉛の不足は精子数の減少に関連していることが確認されました。
精子数の減少が気になる場合、亜鉛を充足させることを意識すると良いかもしれません。