ホモシステインは、体内でメチオニンがシステインに変換される際に生成される物質で、悪玉アミノ酸とも言われ、体内の濃度が高くなると、心筋梗塞などの心臓疾患や脳卒中のリスクが上がる他、妊娠や出産においては、胎児の先天異常や妊娠合併症のリスク上昇につながることがわかっています。
具体的には、血中のホモシステイン濃度が15μmol/L以上になると「高ホモシステイン血症」の状態とされ、卵胞発育への悪影響をはじめ、先天性の奇形や胎盤剥離、流産などのリスクの上昇が知られています。
今回イスラエルのカーメル医療センターでは、2005~2016年の間に胚移植を3回以上不成功の女性127名を対象に、血中のホモシステイン濃度の測定が行われました。
被験者の平均年齢は33.5歳、胚移植の平均回数は4.6回、移植した胚の数は平均で10.4個でした。
血液検査の結果では、血液中のホモシステインの平均値は8.6μmol/lで、参加者の95.8%は、正常範囲内である14μmol/l未満でした。
ただし、ホモシステインと治療成績との関連を調べたところ、ホモシステインが正常範囲であっても、ホモシステインの濃度が高いほど、胚移植に失敗した回数や、今までの胚移植実施回数が多くなる傾向にあり、明らかな関連がみられたとのことです。
コメント
血中のホモシステイン濃度が15μmol/l以上になった状態を「高ホモシステイン血症」と呼び、さまざまな疾患との関連が報告されていますが、今回の研究では、ホモシステインが正常の範囲内であったとしても、ホモシステインが高くなればなるほど、治療成績にマイナスの影響があったとのことです。
葉酸をはじめとして、ビタミン B12、ビタミン B6、といった栄養素が不足すると、体内の代謝がきちんと行われず、ホモシステインが蓄積してしまうことが明らかになっています。
「高ホモシステイン血症」の指摘を受けていない場合でも、葉酸を含むビタミンB群の不足には注意が必要かもしれません。