住宅地における緑地量が居住者の健康に及ぼす影響について、さまざまな研究がなされています。
例えば、緑地量の多い地域に住む妊婦の出生体重が大きく、また早産リスクが低く、さらに緑地量の多さは乳幼児の健康にも良い影響を及ぼすという報告がなされています。
一方で緑地量と妊娠のしやすさの関連については、いままで研究があまりなされていませんでした。
そこで今回、アメリカ・オレゴン州の研究者らによって、北米の妊娠希望女性を対象とした、緑地量と妊娠しやすさの関連についての調査がなされました。
研究では、PRESTO研究(*1)に2013~2019年の間に登録された8,563人の妊娠を希望する女性が対象となりました。
それぞれの参加者の自宅周辺の緑地量(*2)について、年間の最大値、季節ごとの最大値、季節ごとの平均値を算出し、女性の妊娠率との関連を調べました。
妊娠率については、参加者の妊娠の有無を2ヶ月に1回、最大12ヶ月追跡し算出、緑地量以外の要素(参加者の生活習慣や地域特性など)は結果に影響を与えないよう調整がされました。
その結果、50m以内の緑地量が年間で最も多い場所では、少ない場所に比べ、妊娠率は1.33倍でした。
これを年間ではなく、季節ごとの最大値で比べた場合、緑地量が最も多い場所では少ない場所に比べ、1.19倍との結果だったとのことです。
結論として、自宅周辺の緑地量は、妊娠しやすさのおだやかな上昇と関連することが示されました。
*1:PRESTO研究はPregnancy Study Onlineの略で、主に北米に住む妊娠を希望する女性を対象とした研究です。インターネットを通じてデータを収集し、妊娠に関連する様々な要因を調査しています。
*2:緑地量は「正規化植生指標(NDVI)」という指標が用いられました。これは、植物による光の反射の特徴を生かし、衛星データを使って簡単な計算式から植生の状況を把握することを目的として考案された、植生の代表的な指標で、植物の量や活力を表します。
コメント
自宅周辺の緑地量が、女性の妊娠しやすさに影響を及ぼすかを調べた調査です。
実験に参加者の居住地は、アメリカの 48 州すべての地域とカナダの 10 州にわたっていたそうです。
実験の結果は、自宅周辺の緑地量が多いと妊娠率も高い傾向にあったというものですが、この関連は緑地量に妊娠率が直線的に比例するようなシンプルものではなかったとのことです。
妊娠率の上昇にはどのような要因が影響しているのか、またどのように影響を及ぼすかについて、さらなる研究が期待されます。