男性の生殖機能に関して、化学物質や食事、またはBMIや余暇における身体活動との関連についての研究は今までに多くなされてきましたが、職業的な要因についての研究はほとんど行われてきませんでした。
そこで、今回ボストンのマサチューセッツ総合病院で不妊治療を受ける男性を対象に、職業と精液検査の結果や生殖ホルモンの濃度との関連が調査されました。
対象は、2005年から2019年にかけてEARTH研究(マサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調査が行われている現在進行中の研究)に登録した男性パートナー377名でした。
職業については、重いものを持ち上げたり動かしたりする動作があるかや、シフト勤務等、仕事中の身体的負荷に関する質問票を使い、精液検査の結果や生殖ホルモンの濃度との関連を調べました。
なお、年齢、BMI、教育レベル、人種、喫煙習慣、禁欲期間などの、職業以外の要素については、結果に影響をあたえないようデータが調整され、また精液検査では、一人あたり1回から9回、平均2回の検査結果をもとに分析が行われました。
職業調査の結果、参加者のうち12%が仕事で重いものを持ち上げたり動かしたりすることが多い、6%が激しい運動をする、9%が夜勤または交代制のシフト勤務であると回答しましたが、重いものを持ち上げたり動かしたりすることが多い男性は、そうでない男性にくらべて精子濃度が46%高く、総精子数が44%多いことがわかりました。
精子濃度や総精子数は、日勤の男性に比べて交代勤務の男性、また身体的負荷の軽い男性にくらべて重い男性でも同じように高い結果となりました。
またホルモンの状態について調べたところ、仕事で中~重い身体的負荷のある男性は、軽い負荷の男性に比べてテストステロンの濃度が高く、仕事で重いものを動かす/持ち上げることが多い男性は、そうではない男性に比べてエストラジオール濃度が高いことがわかりました。
夜勤・交代勤務の男性は、日勤の男性に比べて、テストステロンとエストラジオールそれぞれ濃度が高くなったとのことです。
コメント
男性の職業による、精液検査の結果やホルモンの濃度との関連を調査した研究です。
身体的負担の大きい仕事、交代勤務や夜勤のある仕事は、精子濃度や総精子数が増え、テストステロンやエストラジオールといったホルモンの値が増加していることから、男性の精巣機能の向上と関連している可能性があります。