地中海地域の伝統的な食事パターンである地中海食は、生活習慣病の発症リスクの低減をはじめとして、健康の維持増進に良い影響を与えることを示す研究データが多くなされています。
男性や女性の妊孕性(妊娠しやすさ)においても例外ではなく、地中海食に近い食べ方をすることが良好な妊娠率につながるという報告がなされています。
今回の研究は、以前行われた食と卵巣の反応性についての研究データを再度分析し、妊娠前の食事が卵巣の反応性に影響を与えるかどうかをあらためて分析したものです。
研究の対象となっていたのは、イタリアのミラノ大学付属病院で生殖医療の治療を受けている296名の患者で、いずれも年齢が18-39歳、BMIが18-25、胞状卵胞(成熟した卵子を含み液で満たされ成長した卵胞。卵巣の予備能をはかる指標とされる。)の数が10-22個、AMH(胞状卵胞から分泌されるホルモン。同じく卵巣予備能をはかる指標となる。)が2-5ng/mlの、いずれも卵巣予備能が正常範囲にある女性たちでした。
研究では、被験者たちに排卵誘発剤を使って卵巣刺激を行い、その反応を観察しました。
また同時に、普段の食事に関し、摂取した食品についてのアンケート調査を行い、その結果から地中海食に近い食事をしているかどうかを地中海スコアとして、低・中・高の3グループに分けました。
卵巣刺激を行った結果、被験者全員が卵巣予備能に問題がみられないにもかかわらず、47名(15.9%)が卵巣刺激に対して低い反応となりました。
(この研究では、採卵の結果採取できた卵子が3個以下であった場合を低反応と定義しました。)
年齢やBMI、生活習慣など、地中海食スコア以外の影響を取り除いた上でデータを解析したところ、卵巣反応の低くなる傾向は、地中海食スコアが上がるほどに低くなることが分かりました。
具体的には、地中海食スコア低のグループの卵巣の反応不良リスクを1とした場合、中のグループではリスクは0.29となりました。地中海食スコアの低グループと中・高グループを比較した場合は、低グループ1に対してリスクは0.34になったとのことです。
この研究によって、卵巣予備能に問題のみられない不妊女性において、地中海食に近い食事をとることで、卵巣刺激への反応が低くなってしまう(採卵できる卵子が少ない)ことを予防できる可能性が示されました。
コメント
この研究により、卵巣予備能に問題がないとされた女性であっても、食事の内容によって、期待されたほどには排卵乳初剤への反応が得られず、採卵数が少なくなることが示されています。
地中海食は一般に健康食として知られ、さまざまな生活習慣病にかかりにくくなるほか、生殖機能との関連についても、その有効性についてさまざまな研究がなされている食事法です。
地中海食は主に、以下のような特徴があります。
・野菜や果物を多く摂取する
・全粒粉を使用する
・脂質はオリーブオイルが中心
・ナッツ類、ベリー類、豆類、イモ類の摂取量が多い
・魚、鶏、乳製品を少量から中量、赤身肉の摂取は少ない
・卵は週4回以下
・食事とともに少量から中量のワインを摂取する
またこの研究に用いられた指標である地中海スコアは、地中海食に関連する11種類の食品の摂取量や摂取頻度を6段階(0-5)で点数化し、それを合計(0-55)することで算出できます。