生殖補助医療(ART)において、胚の着床が失敗した場合でも、多くの場合は原因不明です。
そこでエストニアの研究者らは、女性や男性の生殖器の細菌環境が不妊治療の成績にあたえる影響について調査を行いました。
この研究は、ARTカップル(不妊治療クリニックで生殖補助医療(ART)の治療を受けるカップル)97組と健常カップル12組を対象として行われました。
研究では、各カップルの女性は腟から、男性は精液からサンプルを採取し、そこに含まれる細菌を調べました。
結果として、過去に子をもうけた経験があり、かつ精液中にアシネトバクターを多く持つ男性は、パートナーの胚移植の成功率が最も高かったことがわかりました。
細菌性腟炎を引き起こす病原性の細菌群を持ち、ラクトバチルス・イナースやラクトバチルス・ガセリの多い女性は、ラクトバチルス・クリスパタスや複数種類の乳酸菌群を多く持つ女性よりも胚移植成功率が低かったそうです。
さらに、パートナーの両方とも良い影響をあたえる細菌叢タイプである場合(この研究では15組存在しました)は、胚移植の成功率が53%であり、それ以外のカップルの成功率である25%と比較して優れた成功率を示しました。
結論として、パートナーそれぞれの生殖器内の細菌叢の乱れは、不妊症や治療成績の低下につながる可能性があることが分かりました。
コメント
不妊治療を実施したカップルと不妊ではないカップルの男女を対象に、女性の腟内、男性の精液内微生物を解析した論文です。
結果としては、ある種の微生物優位な状態がART治療成績の良かった人から多く見られる傾向にみられたとのことです。
総括として、双方のパートナーの生殖器における細菌環境の乱れは、カップルの不妊症やART成功率の低下と関連する傾向があるとしています。
生殖器の細菌環境は腸内の細菌環境との関連が報告されています。
お子さんを望む方は、女性のみならず男性も、腸内の環境を整えることを意識すると良いかもしれません。