子宮内膜症は女性ホルモンであるエストロゲンに関連する慢性的な疾患で、不妊症の原因となることが知られています。
子宮内膜症は炎症を起こすことによって、腹腔内の環境悪化や酸化ストレスの増加、さらには受精卵が着床しにくくなることがわかっています。
これまで、アスタキサンチンが子宮内膜症の不妊女性患者への有効性についての研究は行われていませんでしたが、イランの研究者らによって、アスタキサンチンのサプリメントを摂取することによって子宮内膜症の炎症状態や酸化ストレス、治療成績にどのように影響するかについて研究が行われました。
子宮内膜症は、進行度によってⅠからⅣに分類されますが、ステージⅢ(中等度)からステージⅣ(重度)の不妊患者50名を対象としました。
研究では、参加者50名をランダムに2グループに分け、一方にはアスタキサンチンを一日に6mg、もう一方はプラセボ(偽の粒)を12週間投与しました。
投与の前後で、血液と卵胞液中の炎症度、酸化ストレスをいくつかの指標によって測定し、またその後の不妊治療成績を2グループ間で比較しました。
その結果、血液中の総抗酸化力と体内の主要な抗酸化酵素が、プラセボを摂取したグループに比べてアスタキサンチンを摂取したグループで明らかに増加がみられました。
反対に、酸化ストレスの指標の一つであるMDA(活性酸素によって酸化された体内の脂質)は、プラセボグループに比べてアスタキサンチングループで明らかな減少が確認されました。
治療成績については、採卵数、成熟卵指数、良好胚数のいずれも、プラセボグループに比べて、アスタキサンチングループで明らかな増加が確認されました。
アスタキサンチンのサプリメントを摂取することは、子宮内膜症の不妊患者の炎症と酸化ストレスを改善し、不妊治療の成績も改善することが示されました。
コメント
アスタキサンチンは、エビやカニの殻やサケの身の赤い色素で、トマトや人参に含まれるリコペン、β-カロテンと同じカロテノイドと呼ばれる天然色素の一種です。
強い抗酸化作用を持ち、活性酸素の中でも毒性の強いとされる一重項酸素を除去する力はリコペンの1.6倍、βカロテンの4.9倍、脂質の過酸化を抑制する力はビタミンEの1,000倍と言われています。
アスタキサンチンを食事から6mg摂ろうとした場合、紅鮭(1切 80g)では2.4切、車エビ(1尾 70g)では30尾が必要となります。
お子さんを望む子宮内膜症の女性は、サプリメントからのアスタキサンチンの摂取も検討してみても良いかもしれません。