腸内環境が、生殖に関わるホルモンの分泌や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の発症にかかわっているという報告が増えています。
この研究は、銅によって引き起こされる胞発育異常と、腸内細菌のアンバランスとの関係をあきらかにすることを目的として実施されました。
研究は、PCOSの女性181名とPCOSでない女性181名を対象として行われ、食事からの銅の摂取量をインタビューによって聞き取りました。また、腸内細菌叢については、被験者の便を採取し解析が行われました。
分析の結果、食事からの銅の摂取量が高いほど、PCOSの発症リスクも上昇することがわかりました。
具体的には、銅の摂取量が一日に約1.992mgを超える女性では、摂取量が1.992mg未満の女性と比較して、PCOS発症リスクは1.813倍上昇したとのことです。
PCOSの患者はそうではない女性に比べて、腸内環境の維持に重要な役割を果たすバクテロイデス属の細菌の割合が少ないことが示されました。
このことから、食事からの銅の過剰摂取がバクテロイデスの減少を引き起こし、結果としてPCOSの発症リスクの上昇の一因となる可能性が示されました。
ラットを用いた分析では、食事からの多量の銅の摂取が腸内環境の乱れを引き起こし、血液中の炎症や酸化ストレスを増加させ、結果として卵巣でのホルモン分泌に変化が起きることで卵胞の発達に影響を与えることが分かりました。
全体として、食事から摂取する高濃度の銅は、腸内細菌のバランスに影響を与え、炎症と酸化ストレスを引き起こし、さらにホルモンの伝達を阻害し、最終的に卵巣の卵胞発育に影響を与えることが示されました。
コメント
どんな栄養素であっても過剰摂取はマイナスの影響につながりかねません。
この研究では一日の銅の摂取量が約1.992mgを超えるとPCOSのリスクが上昇することが示されましたが、これは日本人女性(18歳以上)の推奨摂取量である0.7mgよりもかなり多い量と言えます。
銅は、食品中ではイカやエビに多く含まれており、海産物が好きな女性は注意が必要かもしれません。
また今回のラットによる研究では、若齢期から性成熟までの期間に過剰に摂取させると異常がみられました。
ヒトで言えば幼児期から思春期くらいにあたると考えられることから、身体をつくる大事な時期に極端に偏った食生活は、将来的なリスクを伴うと言えます。