睡眠障害と女性不妊症との関係

妊孕性に影響する因子

2024年07月09日

Sleep Breath 2023 Mar 6. doi: 10.1007/s11325-023-02802-7. Online ahead of print.

睡眠障害と女性不妊症は、強く関連していることが研究により示されました。

睡眠障害、すなわち、なかなか眠れない、途中で目が覚める、眠りが浅い等、睡眠に何らかの問題があり、日中の眠気や疲れ、体調不良が起こる状態が健康障害になり得ることは明らかです。

ところが、睡眠障害の女性不妊症へのリスクについては十分に検討されているとは言えません。

そこで中国の研究者らは、睡眠障害と女性不妊症リスクをとの関係を検討すべく、横断研究を実施しました。

研究は、全米国民健康栄養調査(NHANES)のデータから、20-40歳の女性1820人を対象に行われ、年齢、喫煙習慣、精神的な健康状態等を考慮して分析が行われました。

NHANESのデータによると、1820人の対象者のうち、248人が不妊症であり、430人が睡眠障害でした。

不妊症と睡眠障害の関係についてデータを解析した結果、睡眠障害はその他の要因に関わりなく、不妊症のリスクに関連することがわかりました。

また年齢、人種/民族、婚姻状況、教育レベル、貧困、BMI、ウエスト周囲径、精神的な健康、喫煙、飲酒、睡眠時間といった要素による、結果への影響を排除するため、データの調整を行ったところ、不妊症のリスクは、睡眠障害のある人ではない人に比べて2.14倍高くなったとのことです。

特に年齢が40-44歳の不妊女性、PHQ-9*スコアが10以上、喫煙者ではさらにリスクが上昇することが示されました。

結論として、睡眠障害と女性不妊症の間には強い関連が認められ、その関連性は他の要因を調整しても維持されました。

*Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)とは、アメリカで開発された、精神疾患を診断、評価するためのアンケート。結果が10点以上の場合はうつ病の可能性が高いとされる。

コメント

寝つきが悪い、また眠りが浅いといった睡眠障害の女性は、不妊症のリスクが高いという研究です。

近年、睡眠の質が体外受精の治療成績やまた男性の精子の質にも影響を及ぼすという研究報告が、相次いでなされています。

それでは、睡眠の質はどのように高めればよいのでしょうか?
良質な睡眠のためのポイントを以下にお伝えします。


◎昼間に太陽光を浴びる量を増やし、夜に浴びる光の量を減らす

睡眠と覚醒のリズムを調節するメラトニンというホルモンの分泌には、浴びる光のメリハリが重要なようです。

特に朝に太陽の光にあたることが効果的で、たとえば、起床後のウォーキングなどが理想的です。たとえそれができなくても、意識して、日中短い時間でも外に出て、太陽光を浴びることです。

そして、夜は反対に光を浴びないこと。たとえば、就寝前のスマホやタブレット、PCは避けるようにした方が良いようです。


◎朝食にたんぱく質を含む食べ物を食べる

メラトニンはアミノ酸の一種であるトリプトファンを原料に体内で合成されます。

トリプトファンは乳製品、大豆製品、卵、肉、魚に多く含まれ、摂取してからメラトニンが生成されるまでには14-16時間かかると言われています。

朝食に卵や納豆、ヨーグルトなどを取り入れると良いかもしれません。


◎糖質の摂り方に気を付ける

寝ている間に血糖値が安定していると、睡眠の質が良くなるとされています。

夕食の主食は、精製度の低いもの(玄米ごはん、胚芽ごはん、ライ麦パン、全粒粉パンなど)を摂るとよさそうです。


◎夕方以降はカフェインを控えめに

カフェインは摂る量とタイミングによって、睡眠の質を下げてしまう原因となります。

カフェインを含むコーヒーや紅茶などの飲料、またチョコレートや抹茶菓子などは午後3時以降(カフェインに敏感な方は午後の時間帯から)は控えるようにすると良いようです。

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