子宮や腟内の細菌環境と不育症の関係

妊孕性に影響する因子

2024年07月19日

Reprod Biomed Online 2022; 45: 1021

子宮内や腟内の細菌環境の異常は不育症のリスクとなる可能性があることが示されました。

初期流産の原因は染色体異常がほとんどを占めますが、慢性子宮内膜炎や細菌性腟炎といった感染症との関連が報告されています。

近年、妊娠初期における健康な腟内環境では、乳酸菌の一種であるラクトバチルス属の菌が多く存在していることがわかってきています。特にラクトバチルス・クリスパタス菌が極端に少なく、細菌バランスの崩れた状態は流産と関連しているとの報告もあります。

そこで、フィンランドの研究者らは、不育症の女性の子宮内や腟内の細菌環境を流産歴のない女性のものと比較し、また腟内に存在する細菌がその女性の子宮内膜の細菌を反映しているのかについても調査しました。

研究は2018年3月から2020年12月にかけてヘルシンキ大学病院にて行われ、連続して2回以上流産した女性(不育症群)47名と流産の経験のない女性(対照群)39名が対象となりました。

研究では、被験者の子宮内膜や腟内の組織を採取し、そこに存在する細菌の種類と割合を解析、不育症群と対照群で比較、また個々の女性についての子宮内膜と腟内の細菌環境も比較しました。

その結果、ラクトバチルス・クリスパタスは、不育症の女性の子宮内ではそうでない女性とくらべて明らかに少ないことが分かりました。一方で、ガードネレラ・バギナリスは、子宮内膜と腟どちらとも対照群より不育症群でより多く存在していることが分かりました。

また、個々の女性における子宮内膜と腟の細菌環境は強く関連していたということです。

以上の結果から、流産経験のない女性と比較して、不育症女性では子宮内にラクトバチルス・クリスパタスの量が少なく、ガードネレラ・バギナリスの量が多いことが分かりました。

子宮内膜の細菌環境がバランスを崩した状態は、原因不明とされることが多い不育症のリスク要因となる可能性があることが示されました。

コメント

子宮内フローラ検査が普及し、子宮内の細菌叢が着床や妊娠へあたえる影響について関心が高まっています。

子宮内細菌叢と妊娠しやすさの関係についてはまだまだわかっていないことが多いものの、腟内細菌叢の不良により細菌性腟症やカンジダ症にかかりやすくなったり、そのまま妊娠すると早産のリスクを高めたりすることがわかっています。

特に、今回の研究によって不育症女性に多く見られたガードネレラ・バギナリスとうい細菌は、細菌性腟症を引き起こす原因のひとつとされています。

生殖器の細菌環境は腸内の細菌環境と密接に関係していることがわかっています。
お子さんを望む方は、腸内の環境を整えることを意識すると良いかもしれません。