流産の経験は、将来的な心血管疾患の発症と関連することがわかっています。一方で、その後もメタボリック症候群の発症との関連については、明らかになっていない部分が多くあります。
昨年、韓国の研究者たちによって行われた研究では、不育症を経験したあとの女性のメタボリック症候群のリスクを評価することを目的として、データの分析が行われました。
研究では、イギリスのバイオバンクのデータベースから、不育症歴のある15,702人と不育症歴のない212,972人を含む228,674人の女性(40~69歳)のデータを対象として、解析が行われました。
すべての参加者は、少なくとも1回は妊娠歴のある女性が抽出されたとのことです。
不育症の定義としては、2回以上の自然流産とし、腹部肥満、高トリグリセリド血症、悪玉コレステロールとされるLDLが高い、高血圧、高血糖のうち3つ以上あてはまる場合に、メタボリック症候群と定義しました。
解析の結果、40-60歳の女性において、不育症歴のある女性は、ない女性にくらべてメタボリック症候群である率があきらかに高いことがわかりました。
付随するいくつかの要素(年齢や人種、出産回数、早期閉経、喫煙、飲酒、運動習慣)による影響もあらためて調整しましたが、依然として、不育症歴のある女性はメタボリック症候群のリスクが高かったとのことです。
*血液や組織などの試料(検体)とそれに付随する診療情報などを保管し、医学研究に活用する仕組み
コメント
この研究は、不育症の経験と、将来的なメタボリック症候群の発症リスクの関連を調査したものでした。その結果不育症を経験した女性は、将来的にメタボリック症候群を発症しやすいことが研究によってわかったとのことです。
メタボリック症候群は、単に腹囲が大きいだけではあてはまらず、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることで、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。
過去に不育症を経験した女性は、現在メタボリック症候群でなくても、長期にわたる健康管理においてそのリスクが高いことを意識しておくとよいかもしれません。