男性不妊、特に特発性造精機能障害*ではその原因の多くに酸化ストレスが関係していることから、抗酸化作用のある成分をサプリメントとして摂取することが対策として用いられています。
特にコエンザイムQ10は、体内でエネルギーをつくり出すことに深く関わっている物質で、男性不妊に対する有用性も今まで多く報告されています。
そこで、昨年イランの研究者たちによって、原因不明の男性不妊患者30名を対象に、コエンザイムQ10が与える精液検査の結果やホルモンの状態、性機能への影響について、調査が行われました。
研究では、参加者をランダムに2グループに分け、一方のグループは1日に100mgのコエンザイムQ10サプリメントを、もう一方はプラセボ(偽の粒)を12週間にわたって摂取し、摂取の前後で精液検査の結果やホルモンの状態、性機能について調べました。参加者の平均年齢は、サプリメント摂取グループで34.07歳、プラセボグループで34.83歳でした。
試験の結果、サプリメントを摂取グループでは、正常精子形態率がWHOの基準(4%以上)を上回った参加者の割合が試験後明らかに増加しました。
その他、精液量や精子数、精子運動率についても基準を上回る参加者は増加していたとのことです。
ホルモンの状態については、あきらかな差とは言えないものの、サプリメントを摂取したグループでホルモン値が正常である参加者が増える傾向にあったとのことです。
さらに、勃起機能、オーガズム、性交満足度、総合満足度、国際勃起機能指数についても、サプリメント摂取グループで上昇する傾向が見られたとのことです。
*なんらかの原因によって精子の形成や成熟が正常に行われず、精子の数が少なくなったり、動きが悪くなっている状態を造精機能障害という。その中でも原因が不明なものが特発性造精機能障害と呼ばれる。
コメント
今回の研究で有意差(たまたま起こった差では無く、意味の有る差)が見られたのは正常精子形態率のみだったとのことですが、精液量や精子数、精子運動率、またホルモンの状態や性機能についても改善の傾向が見られたという結果でした。
この研究で使用されたコエンザイムQ10サプリメントが還元型か、酸化型かは記載がありませんでした。
コエンザイムQ10は、酸化型を摂取した場合は体内で還元型に変換されてから使われるため、還元型で摂取した方が効率が良いとされています。