ビタミンB群は、主に体内のエネルギー代謝に関係する水溶性のビタミンです。妊娠しやすさとの関係についてこれまで報告されているのは葉酸やビタミンB12ですが、ビタミンB群はお互いに協働することが知られています。
そこで2022年に中国の研究グループは、不妊治療を受けている女性を対象に6種類のビタミンB群の血中濃度と、その後の治療成績の関連を調べました。
初めての採卵にのぞむ35歳未満の女性216名を対象に、採卵の直前に採血をし、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、葉酸、メチルマロン酸*を測定しました。そしてそれぞれの血中濃度で、高、中、低の3グループに分け、その後の治療成績との関連を調べました。
その結果、ビタミンB2の血中濃度が高いほど、良好胚率が高く、妊娠率も高いことがわかりました。
また、葉酸はその濃度が中程度のグループでもっとも胚移植数が多くなりました。
さらに、ビタミンB12欠乏の指標であるメチルマロン酸が低いほど、良好胚率が上昇することがわかりました。
その他のビタミンについては治療成績との明らかな差は見られなかったとのことです。
以上のことから、不妊治療を受ける女性は、治療前から十分な量のビタミンB2や葉酸、ビタミンB12を摂取することで良い治療結果につながる可能性が示されました。
*メチルマロン酸はビタミンB群ではないものの、ビタミンB12が体内で代謝される中で重要な役割を果たします。ビタミンB12が不足するとメチルマロン酸が増加することがあることから、ビタミンB12欠乏症の指標として用いられることがあります。
コメント
今回の研究により葉酸のみならず、葉酸と協力してはたらくビタミンB群を充足させておく必要性が示されました。
この研究で治療成績との関連が示されたのは葉酸のほかビタミンB2とビタミンB12でしたが、最近では、葉酸とマルチビタミンミネラルサプリメントの摂取を比較した研究で、葉酸だけの摂取に比べてマルチビタミンミネラルの摂取が初期の胚発育や胎児の成長にプラスに影響することが報告されています。
栄養素は葉酸だけといった特定のものだけでなく、さまざまな栄養素を満遍なく摂ることを意識すると良いかもしれません。