多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢にある女性の約8-15%がり患していると言われており、最近の研究から、ミトコンドリアと卵子の成熟や受精、胚発生の成功についての関連がわかってきています。
そこでイランの研究グループは、PCOSの女性がレスベラトロールのサプリメントを摂取することで、体内のミトコンドリアの働きや抗酸化力、不妊治療の成績にどのような影響を及ぼすかを調査しました。
PCOS患者56人をランダムに2グループに分け、一方にはレスベラトロールサプリメント(1日に800mg)を、もう一方のグループにはプラセボ(偽の粒)をそれぞれ60日間飲んでもらい、卵胞液中の酸化ストレスやミトコンドリアの働き、そして不妊治療の成績について比較しました。
その結果、レスベラトロールを飲んだグループでは、プラセボを飲んだグループに比べて酸化ストレスの値が有意に低く、卵胞液中の抗酸化力が増加したことが分かりました。またミトコンドリアの正常な働きに関連する重要な遺伝子やたんぱく質を有意に増加させることが分かりました。
不妊治療の成績については、レスベラトロールグループではプラセボグループに比べ、卵子の成熟度や高品質な胚の割合が高いことがわかりました。ただし、妊娠率については両グループで差がみられませんでした。
コメント
今回の研究により、PCOSの女性がレスベラトロールを摂取することで、卵子の成熟や胚の質によい影響を与える可能性が示されています。
レスベラトロールはブドウの皮などの植物に含まれるポリフェノールの一種です。ポリフェノールは5000種類以上あると言われ、代表的なものに赤ワインやブルーベリーのアントシアニン、トマトのリコペン、大豆などのイソフラボン、茶の渋み成分のカテキン類、柿の渋み成分のタンニンなどがあります。
ポリフェノールは活性酸素などの有害物質を無害に買える抗酸化作用が強いことが特徴です。これは植物が紫外線などの環境ダメージから身を守るシステムとしてポリフェノールを作り、蓄えているためと考えられます。
ポリフェノールはほとんどの野菜や果物に含まれています。また水に溶けやすい性質があり、比較的短時間で作用するものの、長時間の効果は期待できません。毎日こまめに、さまざまな種類の野菜や果物を食べることが大事です。