食事パターンと精子の質の関係については、今まで多くの研究報告がなされていますが、その多くは不妊治療クリニックに通院する男性が対象で、かつ、健康的な食事パターンとの関連が調査されたものでした。
そこでスペイン・カタルーニャ州にある大学の研究グループは健常男性を対象として、健康的な食事パターンだけでなく、不健康な食事パターンと精子の質との関係を調べました。
Led-Fertyl研究*に登録している200人の男性を対象とし、参加者に対し食事に関するアンケートと精液検査を実施しました。
食事に関するアンケート結果から4つの健康的な食事パターン(地中海食、健康的な植物由来食指数、DASH、EAT-Lancetスコア)と2つの不健康な食事パターン(不健康な植物由来食指数、西洋型食事)にどれだけあてはまるかによってそれぞれ低中高の3グループに分け、精液検査の結果との関連を調べました。
調査の結果、地中海食の高グループは低グループに比べて、総精子数や濃度、精子運動率、前進精子運動率が高いことがわかりました。
同様に、健康的な植物由来食指数の高グリープは低グループと比べて総精子数や精子濃度が高いことがわかりました。
また、食事パターンの各スコアと精液検査の結果との関係を分析した結果、不健康な植物由来食や西洋型食はスコアの上昇に伴って総精子数や精子濃度の低下に関連することが分かりました。
さらに、不健康な植物由来食の高グループは低グループと比較すると、精子濃度の異常や精液検査異常(1つ以上)のリスクが有意に高いことがわかりました。
以上の結果から、健康的な食事パターン(地中海食と健康的な植物由来食)は、高い精子の質に関連する一方で、不健康な食事パターンは低い精子の質に関連することが示されました。
*スペインで行われている男性不妊に関する研究プロジェクトで、主に食事や生活習慣が精子の質にあたえる影響を調査している。
コメント
この研究で用いられた各食事パターンの特徴は以下の通りです。
【健康的な食事パターン】
①地中海食:全粒穀物、果物とナッツ、野菜、豆類、魚を多く、赤身肉や加工肉、乳製品、脂肪、アルコールを少なく
②健康的な植物由来食:全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類、植物油、茶、コーヒー
③高血圧予防食(DASH食):果物、野菜、ナッツや豆類、全粒穀物、低脂肪乳製品を多く、赤身肉や精製肉、砂糖入清涼飲料水、塩分を少なく
④EAT-Lancet食:魚、果物、野菜、ナッツ・豆類、全粒穀物を多く、赤身肉、砂糖を少なく
【不健康な食事パターン】
⑤不健康な植物由来食:果汁、甘味飲料、精製穀物、ポテト、菓子・デザート
⑥西洋型:赤身肉、ファーストフード、揚げ物が多く、果物、野菜、魚の摂取量が少ない
今回の研究ではこのうち①や②の食事に近い食事をしている男性では、精液検査の結果も良好である傾向があったということです。
不健康な食事パターンから健康的な食事パターンへ改善した場合に精子の質の向上させるかについてはさらなる研究が必要ですが、不健康な食事パターンに多くあてはまる食事をしている男性は、①や②のような食事パターンを意識してみるとよいかもしれません。