鉄欠乏性貧血におけるラクトフェリンの有効性

生活習慣・食事・サプリメント

2024年12月10日

BMC Nutr. 2024; 10: 20.

ラクトフェリンは鉄剤に用いられる硫酸第一鉄に比べ、鉄欠乏性貧血に対して、胃腸障害等の副作用がなく、血清鉄やフェリチン、ヘモグロビン値を改善する効果が大きく、鉄剤よりも有用なサプリメントになり得ることが明らかになりました。

ラクトフェリンは鉄結合性糖タンパク質で、汗や涙、鼻水、さらには、子宮頸管粘液に含まれ、抗炎症、抗菌作用、免疫調整作用などを発揮し、外敵から私たちの身体を守る役割を担っていると考えられています。

またラクトフェリンは、その名前の通り鉄と結びつく性質があることから、増殖のために鉄が必須の細菌やウイルスを抑制したり、鉄の吸収を正常化し、鉄の代謝調整にも関わっていることが知られています。

そのため、鉄欠乏性貧血の女性がラクトフェリンを服用することで、血清鉄(血中の鉄濃度)やフェリチン(貯蔵鉄)、ヘモグロビン(赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のことで貧血の指標)が増加し、貧血が改善されるという研究報告が多数なされています。

そこで、今までに行われた研究の結果を総合的に分析するシステマティックレビュー&メタアナリシスという方法を使って、鉄欠乏性貧血対策としてのラクトフェリンと鉄剤に使用されている硫酸第一鉄の改善効果が比較されました。

過去の論文から最終的に19件が抽出され、合計1353人の被験者がラクトフェリン群に、1639人の被験者が硫酸第一鉄群に分けられました。

それらのデータを統合し、解析した結果、ラクトフェリンは硫酸第一鉄に比べて血清鉄やフェリチン、ヘモグロビンの改善効果が大きいことがわかりました。

また硫酸第一鉄では胃腸障害などの副作用が伴うのに対して、ラクトフェリンには副作用は認められず、そのことからも鉄欠乏性貧血の対策として、ラクトフェリンは硫酸第一鉄に比べて優れたサプリメントになり得ると結論づけられています。

コメント

鉄は必須微量元素で、酸素の運搬やミトコンドリアでのエネルギー産生 、酵素の働きをサポートするなど、体内で多くに重要な役割を担っています。

そのため、鉄が欠乏すると、人体のあらゆるところで代謝異常が生じることになります。

特に、妊娠を希望する女性にとっては、妊娠後、胎児の成育に伴い、鉄の必要量が増大しますので、妊娠前から鉄不足を解消しておくことが大切です。

また、鉄が不足している場合、貧血を伴えば対策を講じられるものの、貧血を伴わない鉄不足は見過ごされがちですので、貯蔵鉄であるフェリチンを測定し、鉄が不足していないかどうかをチェックする必要があります。

もしも鉄が不足していて、鉄剤や鉄のサプリメントを服用しても鉄の濃度が上がらないというような場合、鉄の摂取量が少ないからではなく、鉄が吸収されにくい可能性があります。

そのような場合、いくら鉄を補充しても改善されませんし、場合によっては鉄が過剰になり、活性酸素を増やしてしまいかねません。

そこで、ラクトフェリンを摂取し、鉄の吸収を改善することが解決策になるかもしれません。

ラクトフェリンは腸内細菌に働きかけ、腸内環境もよくなりますので、鉄剤による胃腸への負担増大とは「真逆」の結果になり、身体全体にも有用と言えるでしょう。

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