◎2003年度には新生児の65人に1人が体外受精で誕生しています。
体外受精や顕微授精等の高度な不妊治療を受けて妊娠、出産される方の数は、年々、増加しています。
どれくらいかといいますと、最新のデータは2003年度のもので、1年間に1万7400人の赤ちゃんが体外受精によって生まれています。同年度の全新生児数は112万3610人ですから、65人に1人の赤ちゃんが体外受精によって誕生している計算になります。
◎施設(医療機関)間の格差は無視できません。
体外受精等の高度な不妊治療を実施施設(医療機関)数は590もあります。
ところが、年間の治療実績が50以下の施設が306もあって、治療実績には大きなバラツキがあるのが実態で、施設による設備や技術、そして、治療成績の格差は大きいようです。
目安として、年間の治療実施回数が300回以上であると言われます。
治療実施回数は直接確認されてもよいですし、週刊朝日の7/22号に東日本の、7/29号に西日本の不妊治療を実施する病院の、最新データが掲載されています。
◎全体の出産率は17.2%
日本ではそれぞれの病院の治療成績は公的に公表されていません。
日本産科婦人科学会が発表している治療成績は全ての施設の平均の値です。
移植数あたりの出産まで至った割合は、2003年度で17.2%で、どの年度でも、 だいたい、20%弱です。
ただし、この数値は、ほんの参考程度にしかならず、それぞれのカップルに当てはまるものではありません。母親となる女性の年齢や不妊原因、不妊期間や治療歴等を加味する必要があるからです。
それぞれの施設で公表されている治療成績を参考にされるとよいでしょう。
その場合でも、分母を何にしているのか、例えば、移植回数なのか、採卵した回数なのか、また、分子となる妊娠の数ですが、どの時点でもって妊娠とカウントしているかもが施設によってまちまちです。例えば、妊娠反応が確認できた時点なのか、胎嚢が確認できた時点なのか、それとも、心拍が確認できた時点なのか等で、治療成績が異なってくるものです。
◎薬の副作用や多胎妊娠、流産のリスク
体外受精を受ける場合でも、複数の状態のよい卵を得るために、排卵誘発剤を使って、卵巣を刺激します。
まれですが、副作用も起こりえます。
そして、体外受精では多胎妊娠や流産する割合が自然妊娠に比べて高くなります。
どれくらいの違いがあるかといいますと、自然妊娠の場合の多胎率は1%程度、流産については10~15%程度 といわれています。
体外受精を受けた場合の2003年度の数値は、妊娠あたりの多胎の割合は15.8%、流産の割合は23.4%です。
多胎については子宮に戻す受精卵の数に影響されることも知っておきたいものです。
また、卵子や精子を人為的に受精させる治療ですから、生まれてくる子供が何らかの障害をもつのではという不安を持つ人もおられますが、これまでの追跡調査では、それほどの問題は発生していません。
◎費用は平均で30万円くらい
体外受精や顕微授精は健康保険が適用されませんので、一般の不妊治療に比べて高額な費用がかかります。
クリニックによって異なりますが、平均で30万円くらいです。
あと、条件を満たすことができれば、自治体の助成金制度があります。
現在の金額は、1年に10万円で2年まで支払われます。
地域によって多少の違いがありますので、確認する必要があります。
◎何回まで治療を受けるのか予め夫婦で話しあっておく
ご指摘の通り、高度な治療と言えども、それぞれの治療の成功率は、さほど高いものではありません。ですから、一度では妊娠できないくらいの気持ちでいたほうが現実的かもしれません。
また、耳の痛い話しではありますが、体外受精を受けたからといって、確率的には低いですが、 必ず、妊娠できるとは限らないという現実も知っておく必要があります。
そして、そのことも覚悟した上で、ご夫婦でよく話しあい、何回まで治療を続けるのか、予め、ある程度は決めて、治療をスタートされるのがよいのではないでしょうか。
高度な不妊治療は自然妊娠が不可能と診断されたご夫婦でも、妊娠を期待できるようになる反面、リスクも伴うものです。
このことを正しく認識した上で治療に臨まれることが大切です。