それらの研究結果のほとんどは、排卵誘発剤とそれらのガンの発生率との相関関係はみられないとしています。
そして、各国の専門家の間でも、排卵誘発剤を使用することと乳ガン、子宮ガン、卵巣ガン等の発生率には、相関関係は 認められないというのがおおかたの見方のようです。
ただ、過去にオーストラリアでの調査(Lancet 1999;354:1586-1590)、アメリカの調査( American Journal of Epidemiology 2005 161(7):607-615)では、排卵誘発剤の使用によって、それぞれ、乳ガンや子宮ガンのリスクをが高まったする報告がなされています。
おそらく、ご覧になったテレビは、このあたりの報告に言及されたものかと思われますが、上記の通り、これまで実施された排卵誘発剤と婦人系のガンの発生率を調べた調査では、ほとんどが、関連性なしという結論を出していること、そして、専門家の間でも、そのように認識されていることを理解下さい。
また、例えば、アメリカの調査で、子宮ガンの発生率が高まったとされていますが、実際には、どのくらいなのか見てみましょう。
子宮ガンにかかる一般的な割合は、10,000人に20人くらいとされているのですが、排卵誘発剤(クロミフェン)を900mg以上、6ヶ月以上摂取した女性の間では、子宮ガンにかかる割合が、10,000人に46人だったというものです。
いかがですか?
数字上だけでみれば、排卵誘発剤による治療を長期にわたって受けると、子宮ガンにかかる割合が、なんと、2倍以上になった!という言い方が出来るわけです。
その結果だけ聞くと、リスクが大きく高まったように聞こえ、不安を覚えてしまうものですが、それでも、排卵誘発剤の治療を受ければ、ガンにかかるというわけではなく、その割合は、10,000人に46人というレベルなのです。
また、知っておかなければならないことには、ガンにかかるかどうかは、1つの要因で決まるわけでは、決してないということです。多くの要因が、複合的に絡み合ってのことです。
例えば、最新研究で報告されているのは、喫煙は子宮ガンのリスクを60%高める(International Jpurnal of Cancer Mar.2006)とか、逆に、ブロッコリー等のアブラナ科の野菜をたくさん食べることは、卵巣ガンのリスクを40%下げるとか、豆類や野菜、果物、緑茶に含まれる抗酸化成分は、乳ガンや卵巣ガンのリスクを、45%低下させる(the annual meeting of the American Association for Cancer Reserch)というように、食事や生活習慣もそれらのガンの発生率に少なからず、影響を及ぼすようです。