女性の場合、年齢とともに、妊娠する力が低下してしまうのは宿命的なもので、体のそれぞれの機能が自然に低下していくことに伴い、質のよい卵子(精子と出会えば、確実に受精し、妊娠が継続するような生命力の強い卵子のこと)が、排卵される割合が、徐々に、低下していくことによるものです。
その結果、若い頃に比べると、妊娠する迄に時間がかかりますし、妊娠しても、流産してしまう割合も高くなるわけです。
ですから、高齢による不妊というのは、本質的には、卵子の質の低下によるものです。
ところが、体外受精のような高度な生殖補助の役割は、卵子と精子が出会い、受精が成立することを人為的に介添えすることであって、卵子の質の低下を治療することではありませんので、40歳を超えると、高度な生殖補助医療が有効な治療手段ではなくなってしまいます。
これまでの内外のデータを検証してみますと、体外受精を受けることで、妊娠する可能性が高まるのは、だいたい、41歳までであるのは、
そのような理由によるものです。
そして、42歳を超えると、体外受精をうけても、自然な妊娠を目指しても、妊娠率は、さほど変わらなくなってしまいます。
よって、高齢だからといって、体外受精でしか妊娠できないというわけではありません。
もちろん、受精卵まで、確実に確認できるわけですから、それでも、体外受精からスタートするという考え方もあるのでしょうが、どれだけ治療を続けるのかということもありますから、治療と併行してでも、一通りの検査は受けておかれた方がよいと思います。
もしも、卵管の通りに問題はなければ、何回かの治療がうまくいかなくても、自然な妊娠は、十分に期待できるわけですから。
これらのことを踏まえられた上で、ご主人とよくご相談されればと思います。
もう1つの夫婦生活の問題ですが、難しい問題ですが、よくある問題のように思います。
ある研究報告では、セックスの質が妊娠しやすさに影響を及ぼすという学者もいます。要するに、互いに夢中になれるような行為の方が、より妊娠しやすいということです。
もちろん、妊娠すること云々ということだけでなしに、ご主人との関係に関わることで、おっしゃるように、人生の質にかかわるとても大切な問題ですね。
お二人目のお子さんのための治療方針をご相談することに併せて、決して、妻だけが抱え込む問題ではなく、まずは、夫婦の問題として捉えることが、何よりも優先されることのように思います。
お子さんを望まれるのは、単に、家族の頭数の問題ではなく、お二人で、どのような人生を築くのかという問題であるはずで、そのことは、すなわち、「幸せのカタチ」を二人で確認しあうことでもあると思うわけです。
であれば、奥さんが「さみしい人生」を送ることに、ご主人は無関心であられるはずもなく、ましては、悩みの原因にかかわるのが自分の実の母親であるとなれば、ご主人にしか果たせない役割、そして、役割を果たしたい思いもおありでしょう。
うまく解決できるように、心よりお祈りしております。