このように、精子が自力で子宮まで到達出来ているのであれば、わざわざ、人為的に、精子を子宮腔へ注入するのは、不必要で、無駄なことであると考えるのが、フーナーテストが良好であれば、人工授精は意味がないとする根拠です。
確かに、不妊の原因を想定して、つぶしていくという観点から言えば、その通りで、不妊の原因は、その先、具体的には、卵管や卵管采に、妊娠を妨げているなんらかの障害があるのではないかと想定し、ステップアップするのであれば、体外受精という考え方になるわけです。
ですから、1日も早く、妊娠を望み、多少のリスクや金銭的なことよりも、高い妊娠率を求めたいというお考えが、お二人の間で、明確におありなのであれば、体外受精が一番の選択肢になり得るかとは思います。
ただし、これまでの経緯を拝見しますと、今後、妊娠するには、体外受精を受けるしか方法がないというわけではないようです、
ですから、いろいろ試してみて、それでも授かることが出来なかったら、その時になって、体外受精も考えてみようという選択肢は、現在の年齢を考慮に入れても、 十分に、現実的です。
まずは、明確な不妊の原因は見当たらないようですね。
例えば、1年間、授からなかった原因不明の夫婦が、次の1年間に自然妊娠する確率は、50%もあるという信頼できる調査報告があります。
治療方針を考えてみましょう。
原因不明の場合は、原因が分からないなりに、原因を想定して、そのプロセスを人為的に迂回するという治療方法だけでなしに、妊娠の確率を高めるという治療方法もあります。
そのような観点から言えば、人工授精というステップを踏むことは決して無駄な治療ではありません。
例えば、原因不明不妊の場合、タイミング法よりも、 自然周期(過排卵なしの)でも、人工授精を受けた方が妊娠の確率が高まるという大規模で信頼のおける研究報告があります。
排卵誘発剤を使って、たくさん卵子を排卵させ(過排卵)ての人工授精では、確率は、さらに、高くなります。
そして、回数的には、せいぜい、5回程度、人工授精を繰り返しても、授からなければ、いよいよ、そのときには、体外受精を受けることを検討されるべき、ということになると思います。
いかがでしょうか?
妊娠しづらい状態というのは、なかなか、一筋縄では把握できないもののようです。
不妊の原因も、複合的であったり、変動的であったりするようですから、30代前半であれば、まだまだ、焦らずに、お二人の価値観やお考えに基づいて、納得のいく選択をされることが大切ではないかと思います。