妊娠を妨げている原因がはっきりしていて、治療を受けなければ妊娠できないことが明らかであれば、そんなふうに悩むこともないのかもしれません。
予め、どのようにすれば確実に授かるのか、知る方法がないわけですから、なかなか妊娠しないという状況をどうとらえるべきなのかは本当に難しいものです。
とにかく、異常がないのだから、近い将来、自然に授かるかもしれないけど、もしかしたら、検査では発見されなかった不妊の原因が潜んでいるかもしれない・・・、そんなふうに考えが堂々巡りしてしまいますね。
それでは、「通院することの意味」を考えてみましょう。
過去の検査でお二人とも異常なしだったとのことですが、排卵日と思われる頃に夫婦生活をもっているにもかかわらず、2年半もの間、授からないということは、やはり、なんらかの妊娠を妨げている原因が潜んでいる可能性が高いと考えるのが、より 自然な考え方ではないでしょうか?
まずは、検査についてですが、身体の状態というのは、常に、変化しているものですから、再度、受けるに越したことはないと思いますが、過去の検査の結果や直近の基礎体温表を先生にみてもらって、最低限必要な検査だけを受けるという方法もありです。
次に、治療のことですが、これまで排卵日と思われる周辺に夫婦生活をもってきたわけですが、排卵日の予測は意外に難しいものです。
通院することで、超音波で卵胞の大きさをチェックすることで、先生から、より確実なタイミングを指導してもらうことは、決して、意味のないことではありません。
ただ、年齢的なこともありますから、タイミング指導にそれほど時間をかけるのも考えものですし、もちろん、必ずしも、こうしなければならないという方法はありませんから、すぐに人工授精を受けるという選択肢もあると思います。
人工授精については、治療方法としての妊娠率はそれほど高くないのかもしれませんが、ご主人の精子を直接子宮に注入するわけですから、特に、これまで夫婦生活の回数が少なかったと自覚されていたことを考えますと、精子と卵子の出会う確率は高まることは意味のある事ではないでしょうか。
また、自然周期の人工授精では自然妊娠とさほど妊娠率は変わらないとされていますが、人工授精の際に、排卵誘発剤を使って、複数の卵子を排卵させる(過排卵)ことで、妊娠率は高くなると報告されています。ただし、多胎妊娠の確率も高くなりますから慎重に考える必要はあります。
このように、異常がないのに通院する意味がないわけでもありません。
それぞれの治療の目的は、 より妊娠の確率を高めるということになると思います。そして、不妊の原因が潜んでいる可能性を想定して、
比較的、身体への負担やコストが軽い治療からスタートして、妊娠を妨げているかもしれない原因をつぶしていくのがステップアップ治療の考え方です。
もちろん、確実性を考えると低いという印象をもたれるかもしれませんし、賭けという側面があることも否めません。さらに、ステップアップしていくといろいろなリスクも大きくなってもいきます。ですから、通院するかどうか、そして、もしも、通院するにしても、どこまでの治療をどれくらい続けるのかは、お二人の考え方や価値観をベースにして、お二人が、決めることです。
ご参考になりましたでしょうか? うまくいくことをお祈りしています。