精子や胚(受精卵)の凍結保存は、その有効性、安全性についての検証がなされていて、生殖補助医療では、既に、確立された方法だと考えてよいと思います。
いまや、不妊専門クリニックであれば、普通に行われている治療で、そのための設備が整っていて、経験豊富な先生であれば、心配するようなレベルのリスクはありません。
凍結保存の対象になる「精子」や「卵子」、「胚(受精卵)」の中で、精子が細胞の大きさが一番小さいことから、最も凍結保存に適していて、実際に、動物ではなく、ヒトの凍結保存精子で妊娠が成立してから50年以上になりますし、年々、凍結保存技術も進歩しています。
もちろん、いったん、凍結するわけですから、新鮮な精子と全く同じではないでしょうし、運動率も多少は低下することもあるようです。
また、いくら頭で理解しても、お気持ち的な抵抗感もあるかもしれませんね。
ですから、今後のことも含めて、どんな方針で治療に臨まれるかを、ご主人とご一緒にお考えになっておかれるのがよいと思います。
整理してみましょう。
そもそも、なぜ、精子や胚(受精卵)を凍結保存する必要があるのかですが、不妊治療においては、すなわち、妊娠が成立するプロセスにおいては、"タイミング"が全てにおいて優先されるからですね。
ご承知の通り、 いくら状態のよい卵子と精子でも、出会うタイミングが少しでもずれてしまうと、悲しいかな、妊娠が成立しないのです。
ですから、不妊治療は、だいていは、タイミング指導から始めますし、そして、人工授精においても、体外受精や顕微授精などの高度な生殖補助医療においても、医師が最も気を遣うのは、"タイミング"をはかることになるのですね。
もちろん、問題なく、タイミングがあえば、わざわざ、精子や胚を凍結保存することはありません。
このことは、凍結保存に限らず、人工授精しかり、体外受精や顕微授精しかりで、やはり、何らかの問題や妊娠の確率という問題を克服するために生殖技術を利用するわけですね。
さて、ノンノンさんのところのように、ご主人が、どうしても、そのタイミングに病院にきてもらうことが出来ないとか、或いは、体外受精や顕微授精であれば、嬉しいことに、複数の受精卵が得られたとき、全部を戻すわけにはいかないとか、さらには、子宮の着床環境が思わしくなくて、着床しやすい周期に移植するのを延期せざるを得ないというようなケースでは、どうにかして、"タイミング"の問題を克服する必要があるわけですね。
この問題を解決したのが「凍結保存技術」の利用なのです。
ただ、不妊治療の目的は、お元気なお子さんを授かることです。
いくら、素晴らしい技術でも、それによって、妊娠率が大きく下がるとか、先天性障害等のリスクが極端に高くなるようでは、到底、使えないというこになってしまいます。
ですから、不妊治療で利用するさまざまな技術や薬については、それらが、広く使われるようになるまでに、いろいろなマイナス面を厳密に調べて、そのことで克服できるメリットと、そのことでおこりえるリスクを天秤にかけています。
要するに、何らかの問題を解決するために、リスクが発生するということは、日常生活でも、当たり前と言えば、当たり前にあるわけです。
要は、得られるメリットとそのリスクをどうとらえるかです。
いかがでしょうか?
どうしても、ご主人の精子を凍結保存することに抵抗をお感じになられるのであれば、ご主人のお仕事のスケジュールを調整いただくことで解決できる問題ではあるのですが・・・。