ただ、現実的には不妊の原因を明確に特定できるケースは、むしろ、稀なことのようです。
確かに、妊娠する力に影響を及ぼすものやことはたくさん指摘されてはいます。
ただし、無排卵であるとか、両側の卵管が完全に閉塞しているとか、ご主人に精子が全くいないというようなケース以外は、全て相対的なものです。
要するに、ある基準を満たさないと妊娠できないというわけではありません。
実際のところは、先生がおっしゃるように、複数の要因が、複合的に影響していると考えるのが自然なわけです。それほど、妊娠に至るプロセスというのは複雑で、一概には言えないということですね。
ですから、生活習慣についての考え方としては、お酒を飲むことが駄目なんだとか、逆に、禁酒しさえすれば大丈夫なんだということではなく、一応、妊娠することにマイナスの影響を及ぼすものは出来るだけ避けて、とにかく、精神的にも、肉体的にも、バランスを大切にすることだと思います。
生活習慣が妊娠する力に及ぼす影響については、いろいろな"目安"がこれまでの研究で報告されています。
ご参考までにご紹介しておきます。
イギリスの病院で妊娠に至った夫婦2112組を対象にした調査では、
男性側の相対リスクとして、
・1日15本以上の喫煙、
・1週間に20単位以上の飲酒(※ 1単位はビールで大ビン1本、お酒で1合、ワインで3分の1本)
・年齢が45歳以上
また、女性側の相対リスクとして、
・1日15本以上の喫煙、
・1日にカフェイン飲料6杯以上
・BMI(体格指数)が25以上
・年齢が35歳以上
これらの項目が夫婦で4つ以上あれば、これらの項目が全くあてはまらない夫婦に比べて、妊娠するまでに7倍の時間がかかり、妊娠率にすると60%低下すると報告されています。
また、女性の健康に関するガイドラインでは、
女性は週に1~2回、1~2単位の飲酒に、
男性は、1日に3~4単位の飲酒に限定すべきであるとしています。
いずれにしても、これ以上のお酒を飲んで、妊娠に至ったご夫婦もたくさんおられ、全くお酒を飲まないのに長く不妊を経験されるご夫婦もたくさんおられるわけです。
また、個人差もあって、絶対に安全なラインは決められませんし、分かりません。
ですから、妊娠を望まれるのであれば、出来るだけ控えるに越したことはないということになります。ただし、そのことがストレスになってしまうのも考えものです。
あくまで、全体のバランスを考えて、生活習慣を改善していくことが大切です。