排卵誘発剤の使い方も同様に、排卵障害や無排卵を治療するために使う場合と、毎周期、正常に排卵があっても、妊娠率を高める目的で複数の卵子を排卵させる(過排卵)ために使う場合があります。
今回、先生から提案されたのは後者のほうだと思われます。
明確な不妊の原因がみつからない場合には、特に治療する対象がないわけですから、治療内容は、悪いところを治すことではなく、妊娠率を高めるさまざまな工夫を施すということになります。
タイミング法でも、人工授精でも、自然周期(排卵誘発剤を使わない周期)で、一定期間、治療を繰り返しても妊娠しなかった場合には、妊娠率を高めるために過排卵を行うのは一般的な治療方針のようです。
臨床データでは、自然周期に比べて、タイミング法+過排卵で妊娠率が1.5倍、人工授精+過排卵では妊娠率が2倍になると報告されています。
ただし、複数の卵子を排卵させるわけですから、妊娠率が高くなりますが、多胎妊娠の確率も高くなるというマイナス面があるため、タイミング法や人工授精でも最初の数回までは過排卵は行わないという、慎重な使い方をされる先生もいらっしゃいます。
さて、自然妊娠に近い方法で授かるに越したことはないのですが、不妊治療の目的は妊娠することですから、妊娠の見込みが低い方法を、漫然と、繰り返すよりも、適切と考えられるタイミングで、より妊娠の確率の高い方法に移行していく必要があり、次第に、身体に負担のかかる方法になっていかざるを得ません。
また、一般的な治療の進め方のモデルはありますが、施設や先生によって、考え方が違ったりする場合も少なくありません。
ですから、先々、どんな治療があるのか、それは、 どんな目的で、どんなことを施すのか、そして、どのくらいの妊娠率で、どんな副作用がどれくらいの確率で起こりえるのか、さらには、費用はどれくらいかかるのかについての勉強をして、自分たちは、どんな治療を、どこまで希望するのかを、ご主人と十分に話し合って、予め、おおまかにでも考えておくことが大切なことだと思います。
不妊は命にかかわるような病気ではありませんので、必ずこうしなければいけないなんていうことはなく、あくまでも決めるのはお二人ですから。
ただ、先生の勧める治療方法に、正面きって異を唱えるのは難しいものですよね。
ですから、その場合は、他にどんな選択肢が考えられるのかを質問なさってみてはいかがでしょうか?
そして、排卵誘発剤を使う目的や利点を理解したうえでも、どうしても抵抗感があるのであれば、 その時はそのことを率直に伝えるべきでしょう。そのことが強いストレスになるのであれば逆効果になりかねませんし、妊娠率が高まるからといって無理して頑張っても、必ずしも、妊娠できるという保証はないわけですからね。
いずれにしても、これしか方法はないなんてことはありません。
納得のいく治療を受けるためには、先生やスタッフの方の説明やアドバイスを参考にしながらも、自分たちでも勉強しながら、自分たちらしい選択をすることが必要だと思います。
うまくいくことをお祈りしています。