いずれも、人工授精を繰り返し受けられた末に授かられたとのことですので、尚更のことと存じます。
生命の誕生はどのような因果のもとで進むものなのか、全く、恨めしい限りです。
2回も続いたとなれば、どこかに悪いところがあるものと考えてしまうのは当然のことと思います。
ところが、初めての流産、そして、2回続いた流産のほとんどは、たまたま、すなわち、偶然に起こっていることなのです。
そのことを数値でみてみましょう。
流産の原因のほとんどのケースは、胎児の染色体異常によるものとされていて、だいたい、70%くらいと言われています。流産は全妊娠の約15%におこるとされていますから、全ての妊娠の10%に胎児の染色体異常があることになります。
この染色体異常は、両親ともに健康であったとしても、偶然に起こるものです。そして、このたまたま起こる胎児の染色体異常が2回続けておこる確率は1%、3回続けておこるのは0.1%ということになります。
また、2回続けて流産した夫婦が精密検査を受けて明確な流産の原因がみつかるのは数パーセント、3続けて流産した場合でも15%程度にしか過ぎません。
本当に悲しいことではあるのですが、2回続けて流産することは十分にありえることであり、そして、そのほとんどは、夫婦どちらにも悪いところはないということは言えるわけです。
さて、2回も流産が続いてしまうと、次に妊娠が不安になるのも当然のことと思います。
ところが、これも確率から言えば、それほど心配するには及ばないのです。今まで2回流産した方が次の妊娠が流産しないで継続する確率は、なんと、75%で、3回流産した方でも、次の妊娠で出産される確率は55%なんです。
仮に、検査を受けてみて、何らかの原因がみつかったとして、その原因に対して治療を施せば、この確率はもっと高くなるということです。
ですから、不安が大きいということであれば、検査を受けられるに越したことはありません。
いかがでしょうか?
流産は、自然淘汰であるとはよく言われることです。それぞれの数値をみれば、それも頷けることですね。
そう考えると、本当に辛い経験をなさったと思いますが、反対に、この世の生を受けなかったほうがよかった、幸せであったとも言えるかもしれません。そういう意味では、親孝行なお子さんだったわけです。
ドラスティックな出来事ではありますが、そのように理解できなくもありません。
流産に関しては、さまざまな原因が言われるものです。
妊娠がわかっていなかったときに激しい運動をしたからだとか、生活習慣について、指摘されることもあります。
ところが、どれもこれも不確かなものです。
バランスのよい食生活や適度な運動、ストレス発散等、健康的な生活を心がけるのは大切ですが、流産についての本質を正しく認識することがとても大切なことだと思います。