現時点では、 概ね、心身の健康、発育状態には大きな違いはみられないという見解のようです。
現実的には、高度生殖医療のリスクについて留意すべきは、卵子や精子を操作することによるものよりも、多胎妊娠に伴い引きこされるものです。
現在、多胎妊娠については、母親になる女性の年齢に応じて移植する受精卵の数が制限されています。
そして、精巣から採取した精子を用いて顕微授精した場合、射精精子と比べても、特に、リスクが高まることはないとの報告があります。
よって、射精精子の数や運動率によって、リスクが高まることは考えにくいところです。
ただし、厳密に言いますと、卵子と精子を操作することによる子への影響は完全に把握されているわけではありませんし、低出生体重児や早産の割合がやや増えたり、特定の先天性異常のリスクが高まるとの報告もあります。
それらのリスクは純粋に卵子や精子の操作によるものなのか、或いは、不妊の原因によるものなのか、その原因を正確に見極めることは困難ではあるものの、リスクがゼロであるとは言えないことは認識しておく必要があると思います。
また、体外受精でも受精できなかった精子では、たとえ、妊娠、出産できても、はたして、大丈夫なんだろうかという懸念ももっともなことと思います。
人為的に選ばれた精子は、確かに、熾烈な競争を勝ち抜いてきたわけではありません。
ところが、そのことをもって、自然淘汰が働かないときめつけるのは事実に反します。
なぜなら、卵子の中までは助けをかりて到達できたとしても、受精が成立するかどうかは精子に備わったポテンシャルによるところが、決して、小さくないからです。
また、受精が成立した後、受精卵が順調に分割し、成長、そして、着床できるかどうか、いくつもの関門、すなわち、自然な淘汰にさらされるという事実があります。
ですから、自然妊娠であろうと、顕微授精であろうと、妊娠し、途中、流産することなく、この世に生を受けたということは、いくつものドラスティックな条件をクリアしてきた証拠であると考えられなくもありません。