まずは、正確を期すために、最低でも2回の精液検査が必要です。
なぜなら、無精子症と診断されても、実際には少数でも精子が存在する場合もあるからです。精液中に精子がゼロなのか、少なくても存在するのか、その違いは、今後の治療方針を決定するうえでも大変大きいものです。
さて、検査を繰り返しても無精子症であると診断され、かつ、TESE(精巣内精子回収法)が必要と判断された場合でも、精子が採取できる確率やその後の顕微授精の妊娠率については、一概には言えません。
お調べになった通り、FSH(卵胞刺激ホルモン)の値が精子の回収率の目安になるとされています。
それは、閉塞性無精子症、すなわち、精子はつくられているのだけれども精子の通り道に障害があって、精液中にでてくることが出来ないことによる無精子症では、FSHが正常値であり、非閉塞性無精子症、すなわち、精子がつくられていないことによる無精子症では、FSHの値が上昇するとされており、精巣から精子を回収することが出来る可能性は、精子がつくられている閉塞性無精子症のほうが大きいからです。
ところが、FSHの値が上昇していない非閉塞性無精子症の患者さんもいらっしゃいますし、閉塞性無精子症でもFSHが軽度上昇していることもあります。FSHの値だけでは閉塞性か非閉塞性かは区別できないのです。
また、身体的に異常や問題がないからといって、非閉塞性無精子症とは言い切れません。
超音波による検査なども実施しますが、閉塞性無精子症なのか、非閉塞性無精子症なのか、外から判断するのは容易ではないのです。
さらに、TESEによる精子回収率は、顕微鏡を用いた、microdissection TESEなのか、そうでない、conventional TESEなのかによっても異なります。当然、顕微鏡を用いたmicrodissection TESEのほうが回収率は高いとされています。
そのうえ、TESEの成績は、病院や手術する先生によっても異なります。
このように精子回収率は一概には言えないのですが、非閉塞性無精子症の場合は50%くらいとお考えになるのがよいのではないでしょうか。つまり、五分五分ということです。
これらのことをご参考になさって、主治医の先生に詳しく説明してもらってください。