このことは、体外受精だけでなく、タイミング指導や人工授精に伴う排卵誘発剤の使用においても同様のことです。
その理由は以下の通りです。
女性の出生時には体内に原始卵胞が約200万個プログラムされてますが、初潮の頃には、おっしゃるように約30万個と言われています。
排卵の3ヶ月くらい前にはそこから約1000個の卵子が選ばれ、成熟を開始します。
月経がはじまる頃には、その中から約20個が選ばれ、さらに、その中から1つだけ(主席卵胞)が選ばれ、排卵するわけです。
結局、排卵前の3ヶ月に目覚めた約1000個から1個だけが排卵し、残りは消滅してしまいます。
そして、その消滅する運命にあった卵子に排卵誘発剤が働きかけて、拾い上げるのです。
ですから、排卵誘発剤を使っても、使わなくても、毎月、1000個ずつ減っていくというわけです。
一方、自然に選ばれる卵子が質の良い卵子かどうか、よく質問されますが、必ずしもそうとは限りません。
選ばれたのは、偶然、つまりは、"たまたま"ということです。
ですから、自然に選ばれた卵子で妊娠に至らずに、排卵誘発剤の刺激で、発育、成熟しら卵子で妊娠することがあるのです。
体外受精の際に、卵巣を刺激し、出来るだけ多くの卵子を採卵しようとするのは、そうしたほうが質のよい卵子に出会う確率が高まり、妊娠率が高くなるからです。
このように、不妊治療は年齢との闘いという側面が宿命的にあるわけです。
また、最近は、不妊治療を開始する際に、血中のAMH(アンチミューラリアンホルモン)濃度を測定するクリニックが増えてきました。
おっしゃるように、AMHは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、原始卵胞から発育する前胞状卵胞数を反映すると考えられています。
そのために卵巣予備能(卵巣にどれくらいの卵子が残っているか、卵巣年齢)の目安になります。
卵巣予備能は年齢に伴い低下していきますが、個人差が大きいものです。
従来、卵巣予備能を知るにはFSHが用いられていました。
ところが、FSHは変動が大きいのに対して、AMHは月経周期中の変動がなく、そのため、最近は、AMHが卵巣予備能の目安を知るために用いられるようになりました。
AMHによって排卵誘発剤への反応度合を予測することが可能なため、AMHが年齢の割に低ければ治療(のステップアップ)を急ぐ必要があるということになり、卵巣刺激法や治療方針を決定するうえで最も信頼できる目安になります。
ご参考になりましたでしょうか?