これまでの不妊治療で妊娠に至らなかったとのことですが、日本産科婦人科学会の統計では、42歳の体外受精の治療あたりの妊娠率は7.1%、移植あたりの妊娠率は13.4%、また、流産率は49.7%ですから、そのこと自体、悲観すべき結果ではありません。
検査の結果、どこも異常はなく、原因不明不妊とのことですが、これまで妊娠に至らなかった原因は、年齢によるものと受けとめるのが自然な考え方だと思います。
さて、年齢による卵巣の働きの低下がどの程度なのか、気になるところだと思います。
卵巣の働きの目安となるのは、卵巣にあとどれくらいの卵が残っているかです。
女性は、毎日、精子をつくり続けている男性とは違い、生まれたときから卵巣内にすべての卵子がすでにあって、新たにつくることはありません。
ですから、女性が年をとればとるほど、排卵したり、自然に消滅したりして、卵子の数はどんどん減っていき、また、残った卵子も一緒に年をとって(質が低下して)いきます。
ただし、個人差がありますので、卵巣にあとどれくらい卵子が残っているのかは卵巣予備能検査で調べます。
月経3日目のFSHの値がよく用いられます。
この値は年齢とともに高くなりますが、10以上で卵巣予備能の低下の可能性があり、15以上になると体外受精の成績が低下すると言われています。
11.3とのことですので、年齢以上に卵巣機能が低下しているとは言えないと思います。
また、FSHの値は変動することが多いので、最近は変動の少ないAMH(アンチミューラリアンホルモン)で卵巣予備能を調べることが多いようです。
この卵巣予備能はあくまで卵巣内に残っている卵子の数です。
卵子の数が少ないということは妊娠率の低下、すなわち、妊娠しづらいということですが、妊娠できるかどうかは卵子の"量"ではなく、"質"です。
つまり、卵巣予備能検査では卵子の量は診断できますが質まではわかりません。
ですから、妊娠しづらいけれども、妊娠の可能性を否定することはできません。
さて、高齢のため卵巣の機能が低下して、妊娠しづらくなっている場合、どのように妊娠を目指せばいいのでしょうか。
まずは、年齢による卵子の数の減少や質の低下は、逆転させることが出来ません。
取り組めることと言えば、年齢以外で卵巣の機能を低下させているものがあれば、その影響をなくすか、軽くすることです。
そのことで卵巣の老化を遅らせたり、不妊治療の治療成績や自然妊娠の確率が少しでも改善されるはずです。
具体的には、ご主人ともども、心身の状態の健康度を高めることです。
ウォーキングなどの運動習慣、規則正しい生活リズムと質のよい睡眠(早寝早起き)、タバコや大量の飲酒を控えることは、もちろん、3食をバランスよく食べ、楽しく毎日を過ごすことです。
そして、その上で、妊娠しやすい時期にできるだけ性交の回数を増やすことです。
また、体外受精は最も確率の高い方法になりますので、ご主人とご相談した結果、再度、チャレンジされるのであれば、最適な卵巣刺激方法を選択すること、また、予め、何回迄受けるという計画を立てたうえで再開されることが大切なことだと思います。
必ず、授かるという保障はありませんし、確率も高いとは言えないとは思いますが、自分たちに備わったチカラを信じて、後々、後悔のない方法をお二人で選択されることが大切だと思います。